君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 ますます人を食うようなその態度に苛立つ反面、なぜだか愉快になってくる。
 俺とは対照的な性格と言っていいこの男との付き合いが不思議と続いている要因のひとつだろう。
 
 こいつの名は柳瀬凌。

 学部は違ったが同じ大学院卒業でなにかと縁があり、俺が日本の、凌がアメリカの大学の教授職に就いた今も、こうして交流が続いている。

 ネクタイを寛げスーツをラフに着て、日本人離れした整った顔に気障に長めの前髪を垂らしたその風貌は、相変わらず研究者というよりかはチャラチャラしたファッションモデルのように見えた。

 だがこれでも去年発表した論文は各国から賞賛を集めていて、プロフェッサーとしてのキャリアは順調らしい。

 現在は仕事の関係でアメリカから一時帰国しているとのことで、帰国早々こいつの方から連絡があり、こうして再会した次第だった。

 再会の乾杯を交わし、互いの近況を報告しあい、世間話などを取り留めもなく続けて少し酒が入ってくると、話題はやはり俺の結婚になった。
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