【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
プロローグ
 翡翠(ひすい)のような目が、薄暗い空き教室で光を帯びている。

 絹糸(きぬいと)のように柔らかそうな金の髪が、サラリと私の頬にかかった。

 間近に見上げた綺麗な顔はどちらかというと可愛い。

 それでも(あや)しく()を描く唇から零れた声は、低い男のもの。


「協力したげる」


 甘く、優しく響く声。

 それに反応するように胸の奥で鐘が鳴り響く。


「その代わり……」


 クスリと笑った彼は、次の瞬間表情を変えた。


「分かってるよな?」


 楽し気に翡翠の目を細めた彼は、私を押し倒したままワルい顔をしていた。
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