【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
ワルい男
 ……思えば、累さんが係わると私は冷静な判断が出来なくなっていた。

 好みすぎる見た目に、私のツボをついて来るあざとさ。

 怖くてワルい顔には翻弄されるばかりで……。


 だからきっと、今回もそのせいだ。

 ちゃんと考えればこの可能性も思いついたかもしれないのに、冷静になり切れていなかったせいでこんな事態になってるんだ。


「そんなに睨まないでくれよ」


 眉をハの字にしながらも、楽し気な笑みを浮かべる裕くん。

 睨むなって……この状況で睨まない方がおかしいでしょ⁉


 裕くんから詳しい話を聞くため、二人きりで人が来なそうな理科準備室に入った途端拘束された。

 何をするのかと問いただす前に両手を後ろに縛られて、強い力で椅子に座らせられてしまう。

 私は女だし力は弱いけれど、ハンターとして訓練はしてきてた。

 なのにこんな簡単に拘束されるなんて……。


「裕くん、あなたもしかして……」

「あ、やっと気づいた? そうだよ。俺も累さんと同じヴァンパイア」


 少し興奮した様子の裕くんは、妖しい笑みを浮かべて私の髪を払う。
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