お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜


 帰り道。二人で手を繋いで歩きながら、メリンは少しむすっとしてフィオンに忠告した。
 むすっとした顔が可愛くて、その突き出た唇にフィオンは自身の唇を重ねた。

「フィオン! こんなところで」

 メリンは後ろからついてくるマリーが見ていると焦るも、フィオンはあっけらかんと答える。

「夫婦なんだからいいじゃないか。メリンが広い心を持たなくったって、その都度きちんと話し合ってこうして愛を確かめ合えば」
「夫婦だから?」
「愛し合う夫婦だから」
 
 屋敷へ戻ると、この日メリンはフィオンから離してもらえなかった。
 メリンは「実家に帰る」という言葉が人間界でどれほど大きな意味を持つことかと思い知ったのだった。軽い気持ちで使ったつもりはなかったが、もう二度と使わないと心に誓ったメリンであった。

 それからというもの、妻子持ちの騎士が街で若い女性を助ける際に「義務ですから」という余計な一言が付け加えられるようになったとか。
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