悠久の絃
夜星「悠先生、早瀬って分かるんじゃないかな?早瀬友和(ハヤセ トモカズ)っていう名前なんだけど」


「はい。兄の友人ですよね。よく、実家にいらしてました」


夜星「うん。その早瀬先生は院長先生の同期で、この病院に勤めていらっしゃったそうなんだ。国内外からオファーが来るほど腕も優秀で、院長先生と張り合う実力があった。上司や部下だけではなく大学の生徒からも信頼されていた。

悠先生も椎名先生も、律先生が同期だから知っているよね。


ところが、8年前、この病院前のロータリーで起きた玉突き事故に巻き込まれた。その時の遺言が
『絃は、強いから、俺がいなくても大丈夫。
輸血、もういいよ…』
だったんだよ。

院長先生はその後何度か絃ちゃんの家を訪ねたみたいなんだけど、もう、早瀬先生のご実家に引っ越してしまったみたいで会えなかったそうだ。


そして8年越しの再会が、こんな形なんだ。



俺達は院長三家の優秀な血を引く絃ちゃんを育て上げないといけない。
もし、施設に入ってしまったら、居場所は分からなくなるし、俺達が治療できるかも分からない。元々、早瀬家と院長先生の御一家はこの病院創設時以来の仲だと伺った。院長先生も施設に入れることは反対だ。

しかし、院長という立場上、引き取って育てるということは難しい。だから、なるべくこの中の誰かが引き取る。
ということをこれから話し合うんだ。」


なるほど。たしかに院長先生は、38歳という年齢でこの病院を背負っている。いとちゃんの年齢的にも同期なら父親として有り得る。


「そうだったんですね。あの時の兄の様子から、早瀬先生がどんな医師だったのかは存じ上げています。」


副院長「そうなんだよ。ただ、彼女のカルテを見る限り、引き取るのは医療従事者、欲を言えば指示を出せる我々医師が好ましいと思われる。」


「もし、この中で誰も引き取らないとなってしまった場合、、、、、、、、








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