【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「別にどんな本を読んでいたっていいじゃない。他人の学びを笑うなんて品がないですね。王子様」
相変わらず、エルヴィアナは実直だ。正しいと思ったことをはっきり言う。しかしこの状況の場合、庇われる方が恥ずかしい。
エルヴィアナはむしろ興味を持って本の背表紙を眺め、そのうちの一冊を指差した。
「……これ、わたしも読んでいい?」
指差したのは、『恋人とベストパートナーになるための方法』という本。つまり、クラウスと良い関係になるために勉強しようとしてくれているのだ。
「……構わない」
「ありがとう」
彼女は本を抜き取り、頬を緩めながらぼそっと呟いた。
「……これで――もっと仲良くなれるかしら」
独り言のつもりらしいが、クラウスの耳はしっかり聞き取った。あまりにも健気で、いじらしくて、不器用で。愛おしさが込み上げて内側から何かが爆発してしまいそうだった。
(俺の婚約者、可愛すぎじゃないか?)
クラウスは頭を抱えた。
そのとき、扉がノックされて、呼んだ覚えのない給仕が入室した。ワゴンの上には大きな皿とフードカバーが。食べ物もまだ頼んでいないはずだ。
すると、エルヴィアナたちが「せーの」と声を合わせた。
「「誕生日、おめでとう!」」
「……!」
フードカバーをリジーが外すと、中には芸術品のような二段のケーキが。上にチョコレートで"誕生日おめでとう"と器用に文字が書かれている。その流麗な筆跡は、エルヴィアナのものだ。
「クラウス様、自分の誕生日とかに頓着しないでしょう? でもせっかくだからみんなでお祝いしたかったの。驚いた?」
そういえば今日は誕生日だった。すっかり忘れていた。貴族の中には記念日を重要視し、誕生日のときに盛大にパーティーを開く人もいるが、エルヴィアナが言うように、クラウスは全く祝い事に興味がなかった。