【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜


「それではあとはお二人でごゆっくり〜! わたしは先にお屋敷に戻りますからね」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 何勝手に――」

 引き留めようと手を伸ばしたが、あっという間に人集りの中に消えてしまうリジー。人混みを見渡していたら、ぽんと肩を叩かれ、恐る恐る振り返る。まるで、探しても無駄だと言わんばかりにクラウスが首を横に振る。彼は有無も言わさないような不敵な笑みを浮かべ、こちらを見下ろした。

「君とデートができるとは夢のようだ」
「まだデートするなんてひと言も言ってな――」
「店を予約している。きっと君も気に入ってくれるだろう」
「わっ、クラウス様!?」

 どこかの侍女と同じで、全く人の話を聞いていない。当たり前のように手を引かれ、どこかへ連れていかれる。
 強引だが、歩調は合わせてくれているし、車道側を歩くという気遣いがさり気ない。

(一体……どこに連れていくつもりなのかしら)

 連れて行かれたのは、二階建てのメルヘンチックな建物。扉を開けると、カランカランとベルが鳴り、奥から派手な装飾の礼服を着た――美男子がぞろぞろと現れた。

 エルヴィアナの目の前で、胸に手を当てて紳士的に一礼される。

「「お待ちしておりました。――レディ」」
「!」

 レディと呼ばれて、エルヴィアナの肩がびくっと跳ねた。
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