【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜


「どういう風の吹き回しだい? 今まで散々彼女のことを放ったらかしにしていたくせに、今更婚約者面するなんて」

 まるで、喧嘩を売っているみたいな言い方だ。二人が仲直りしたのが気に入らないような。

「婚約者面ではない。彼女の婚約者なのは純然たる事実だ」
「書類上はね。相変わらず君は女性の感情の機微に疎いらしい」

 棘のある言い方に、何か引っかかりを覚える。次の瞬間、ルイスがエルヴィアナの肩に手を伸ばした。彼は、他人の婚約者に不用意に触れるような人ではないのに。おかしい。

「エルヴィアナ嬢。君の気持ちはよく分かっているよ。もう我慢することはない。僕が君を守るから」
「……はい?」

 言っている意味が分からなくて首を傾げる。肩に置かれた彼の手を振り払い、「どういうことですか」と聞き返す。ルイスは同情したような様子で言った。

「君がクラウスと別れたがってるってことだよ。聞いたんだ。君はクラウスのことを嫌っているのだと。――それから」

 ルイスは懐から少し歪な飾り紐を取り出した。

(これ……王女様の)

 狩猟祭初日に、ルーシェルがクラウスに渡そうとしていたものに似ている。これも彼女の手作りだろうか。彼は飾り紐を大事そうに握りながら目を細めた。

「君の気持ちは受け取ったよ。君が僕を選んでくれるなら、僕もその気持ちに応えよう。その男が嫌なら、僕の妻になればいい」

 どうやらルイスは、その飾り紐をエルヴィアナがルイスのために作ったと勘違いしているらしい。しかも、僕の妻になればいいと求婚まがいなことを言ってきた。

 彼がずっと慕ってきたのはリジーのはず。けれど、恍惚とした彼の瞳を見たとき確信した。

(ルイス様に……魅了魔法がかかっている)
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