【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜

「ここが気に入らないのなら、いつでも辞めてくださって構いませんわ。収入がなくなれば、ご家族は路頭に迷うことになるでしょうけれど、わたくしは知りません」
「い、いえ! とんでもございません。何卒解雇だけはご容赦ください……っ」

 青ざめた顔をして深く頭を下げる彼女。その頭を上から押さえつけて床に擦り付ける。

「人に物を頼むときはこうするのよ」

 彼女の家は大家族だった。大黒柱の父親が病床に伏してしまい、職を失い金が必要になった。
 普通は王女の侍女というと貴族の娘を選ぶものだが、それではある程度礼儀を持って接さなくてはならない。侍女を好き勝手こき使うために、少し身分が低く、かつ元裕福な家の娘で教養のある彼女を雇ったのだった。
 のっぴきならない事情がある彼女は、簡単に辞めることができないだろうと思ったから。予想通り、ひどく虐めても彼女は我慢して働き続けた。

 セレナをいびっている様子を見たルイスは、露骨に嫌悪感を滲ませて、「その辺りにしておけ」とルーシェルの腕を取り上げた。

「――それで。魔獣はどこに隠したんだい?」
「お兄様には関係のないことです。きちんと騎士団に引き渡しますから、ご心配なく」

 ルイスはこちらに寄り、玲瓏と言った。

「妙なことをするなよ」
「妙なこと?」
「ああ。誰かを陥れようとすれば、必ず報いを受けることになる。それが世の摂理だ。人を呪わば穴二つ、なんて言うだろう?」
「…………」
「兄から可愛い妹への忠告だ」

 疑ってくる兄を半眼で見上げ、「ご忠告どうも」と軽くあしらい、踵を返した。

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