【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
三章 解けない魔法

21_怪しい取引

 
 魅了魔法の呪いは解けた。伏せってばかりだった体調も、少しずつ回復していった。

 そして今日は、クラウスとピクニックに出かける日。焼き菓子を焼いて、サンドイッチを作り、バスケットに詰めた。リジーに身支度を整えてもらったら準備万端だ。

 鏡台の前に座り、リジーに髪を整えてもらう。

「今日はどんな髪型にしましょうか?」
「後ろでひとつにまとめてちょうだい」
「分かりました。ちょっと編み込みますね」

 彼女は器用にエルヴィアナの黒髪を結い始めた。少し前まではクマがひどくて顔色も悪かったので、白粉で誤魔化していたが、今は元の健康的な色を取り戻している。

 鏡越しにリジーの腕が見えた。一介の侍女がつけるには高価すぎるブレスレットが袖口の近くで輝いていた。

「そのブレスレットは……」
「すみません。仕事中は外すつもりだったのですが、うっかりつけっぱなしに……」
「ううん。咎めている訳じゃないわ。ただ素敵だと思ったの。ルイス様からの贈り物?」

 リジーはかっと顔を赤くして、ブレスレットをそっと撫でながら「はい」と頷いた。

 エルヴィアナの呪いが解けたことで、リジーはルイスとのことを真剣に考え、求婚を受けることにしたらしい。

「幸せそうで何よりね」

 彼女は柔らかい表情を浮かべながら、また頷いた。ルイスは公爵位を叙爵されているので、結婚したらリジーは公爵夫人という地位になる。彼女は元貴族とはいえ庶民。嫁入りしても大変なことは多いだろうが、ルイスは聡い人なので安心して任せられる。きっとしっかり彼女のことを守ってくれるだろう。

 リジーの腕で煌めくブレスレットを、微笑ましくも少しだけ羨ましい気持ちで眺めた。自分もクラウスとの愛情の証を形として身につけられたらいいのに、と思った。
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