冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「…はい…」

『真嶋さん、今電話大丈夫?まだ会社?』

「はい、あ…いつもお世話になっており—」

『あ、仕事の電話じゃないから挨拶とかいらない。』

「え、じゃあ…」
仕事ではないと言われ、茉白は戸惑う。

『真嶋さんに返してもらいたいものがあるんだけど』

「え」

『前に貸したハンカチ、返して欲しいんだけど。今持ってたりする?』

「あ…そうですよね…ずっと返さなきゃって思ってたのに忘れてて…今あります!」
茉白は返しそびれたハンカチをずっと会社のデスクに置いていた。

『じゃあ今から取りに行くから、ついでに食事でもどう?仕事忙しい?』

「え…仕事は…大丈夫ですけど…」
今日はもう仕事に集中できそうにないから帰ろうとしていた。

『じゃあ決まり。今から向かうからこの間のところで待ってて。20分くらいで着く。』

「え、あの」
遙斗は電話を切ってしまった。

(今日は服装がイマイチだし…さっき莉子ちゃんと泣いたからメイクもなんか微妙だし…)

それでも心のどこかで今この瞬間に遙斗に会いたいと思っていた。


先日と同じ場所で待っていると、遙斗の車が現れた。

「あの、これ…長い間すみませんでした。」
茉白は車に乗るとすぐ、ハンカチを返した。

「こんなの口実だから、別に返さなくてもいいんだけどね。」

「え…?」

「まぁいいや。ハンカチのお返しってことで、今日は俺の行きたい店に付き合ってもらおうかな。」

「で、でもこんな格好なので…それにあんまり高いお店はご馳走できそうにないです…」
茉白が恐縮して言うと、遙斗は笑った。

「たまには何も言わずに格好つけさせてよ。」
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