冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「でも…しばらくして私が生まれるときには会社の名前はドロドロだけど、子どもの名前はキレイな名前にしようって…」

「ああ、だから—」


「茉白—か。」


ふいに遙斗が自分の名前を口にして、瞬間的に茉白の耳が熱くなった。

「…は、はい…そういうことです。」


——— マシマもマシロも大して変わらないし

(私、なにもわかってなかった…)

(…雪村専務の声で言われたら全然違う…)

それだけ遙斗が特別、遙斗のことが好きなのだと自覚する。
茉白の喉の奥がキュ…と息苦しく、熱くなる。


「会社を守るのは確かに難しいよな。名前だってただ残せば良いってもんじゃない。」
遙斗がつぶやいた。

「………」
莉子、佐藤、綿貫、そして、影沼と父の顔が浮かぶ。


「少しは気晴らしになりましたか?」
食事を終えた車の中で遙斗が冗談めかして言った。

「気晴らしには贅沢すぎです…」
なぜか不機嫌そうに言う茉白に、遙斗は笑う。

「今日もドライブに付き合ってよ。」

「…でも…私は…」

「まだ正式には婚約してないって米良に聞いたけど?」

「………」

「ハンカチのお礼がまだ足りてない。」

そう言って笑うと、遙斗は車を走らせた。
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