冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
「…断るつもりで…というか、断ろうとしたんですけど…慰留されていて…正直迷ってます…」
茉白の口振りが重くなる。

「LOSKAのためには影沼さんと結婚した方が良いってわかっているので…」

「LOSKAのために結婚するのか?」

「え…」
遙斗からその質問をされるとは思わなかった。

「…雪村専務だって…いずれシャルドンのために結婚…されるんじゃないですか?」
茉白は遙斗の顔を見た。

「周りはそう思ってるみたいだけど、俺はそんな気は無いよ。」

「え?」

「そこまで会社に人生懸けたら、仕事が嫌いになるんじゃない?」
遙斗はあっさりとした口調で言った。

「そんなことに左右されて存続できなくなるような会社なんてそれまでだろ。」

「でも…LOSKAは…それに父も…」
茉白はまた俯いてしまう。

「“頼れるところは頼る”って言ってたけど—」

「………」

「…俺には頼れない?」

「え…」

思いがけない遙斗の言葉に茉白は一瞬驚いて遙斗の方を見たが、すぐに下を向いて首を横に振った。

「頼れないです。資金援助していただくにしてもシャルドンにメリットが無さすぎるって私でもわかります。ご迷惑はおかけできません。」

「…そっか」
遙斗はまたあっさりとした口調で言う。

「俺は助けを求めていない人間を助けるほどヒマな人間ではないから、真嶋さんが決めた方に進めば良いと思うよ。」
遙斗の言葉に、茉白はどことなく突き放されたような気持ちになった。

(自分で頼らないって言ったくせに…わがまま…)

「ただし、助けを求める人間は助ける。熱意のある人間ならな。」

遙斗の瞳が茉白の瞳を捉える。

「………」

「帰ろうか」

茉白の困った表情を見て、遙斗も困ったような表情で優しく笑って言った。
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