天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
下級天使に見られたら、あっという間に堕天使候補にあがるぞ。

グルシアは壁にもたれかかって、がっくりと肩を落とした。

「濡れている・・」

「横にトイレットペーパーがあるだろう。それで拭きとれ」

カラカラと金属音がして、魔女は指示の通りやっているようだ。

「そうしたら、立ち上がって、
もう一度、服を着るんだ」
沈黙・・

「着たよ」

「いいか、出る前に必ず流せ。
さっきのボタンの隣に大きいボタンがあるだろうが。
それを押せばいい」

ジャァーーーーー

「流れたよ」
魔女が報告した。

「横に手を洗う場所があるだろう。手を洗うんだ」

「洗った」
「よし、出ろ」

グルシアは壁沿いに寄りかかるように、出て来た魔女を見た。

「うん・・結構手順が多い。
ニンゲンってめんどうくさいな」
魔女は、首をコキコキ動かした。

「あたりまえだ。
ニンゲンの体は、食べれば、当然、排泄するようにできている。
健康維持には大切な事だ」

そう言いながら、グルシアは目を閉じて、額に手をやった。

こいつは、本当にニンゲンの体の扱いを、何もわかっちゃいないのだ。

「歯ブラシ・洗顔せっけん・タオル・・
お前が使う物、すぐ買わないとな」

魔女は不思議そうな顔をして、
グルシアの姿を眺めていた。

「ニンゲンって、家では腰に布を巻いただけでいるのか?」

「ちゃうぞー!!!!」

グルシアは思いっきり否定して、タオルを押さえながら、慌てて
風呂場に戻った。
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