天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)

魔女の望み


グルシアは天界の回廊のベンチで、白い百合がいくつも揺れているのをぼんやりと見ていた。

なぜなのか・・

あの魔女といると、よくも悪くも感情が揺れてしまう。

ズボンのポケットに手を入れると、あの黒ビキニパンツが触れた。

まったく、どうすればいいのか・・

「おや、こんな所で、顔色が良くないね。
何か落ち込んでいる?」

サリエルが、百合の茂みから
ひらりと出て来て、グルシアの隣に座った。

「魔女と・・少し食い違いがあって、言い争いをしただけだ。
たいした事ではない」

グルシアは、サリエルの興味深そうな視線を感じて、話題を変えた。

「今、そっちに行こうと思っていた。
ニンゲン界の書類を、渡そうと思っていたところで・・」

グルシアは側に置いてあったアタッシュケースを開き、紙ばさみを出した。

その中から一枚の紙がサリエルの足元に落ちた。

「あれ、これは・・?」

サリエルが、その紙を拾い上げた。
「魔女ちゃんが、書いたもの?」

グルシアが、確認しようと覗き込んだ。

「チョコミントアイス、フルーツパフェ、プリンアラモード、モンブラン、チョコレートケーキ・・」

サリエルが読み上げた

「ハハハハ・・何?これは?」

サリエルは、グルシアの顔を笑顔で見て、また紙片に目を落とした。

「ええと、温泉・・露天風呂・・ワイナリー、ブドウ畑、酒蔵?
クラフトビール、ホップ畑」

「ネットで何か調べたのだろう」

グルシアは、スマホをいじっている魔女の姿を思い出していた。

サリエルが続けた。

「天使長が好きな物・・おにぎり・・炊飯器を買う・・米はコシヒカリ」
そう言って、グルシアを見た。

「はぁーー、そうなんだ」
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