天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)
夫婦という設定なのだから、別に構わないとも思うが、情が入りすぎていると思われるだろう。

グルシアは、そのまま、中央通路を進み出た

正面の突き当り、大きな祭壇の前に、グランドピアノが置いてある。

「調律が今、ちょうど終わったところでして。
どうですか?
漆原先生、一曲弾いていただけないですか」

サリエルは、促すようにピアノのほうに手を向けた。

「先生のピアノはプロ級ですからね、即興でお願いしますよ」

サリエルは満面の笑顔で、魔女を見た。

「奥様もぜひ、お聞きになりたいでしょう?
天界の音楽を」

魔女は、よくわからないというように、あいまいに微笑んだ。

これが、サリエルの仕組んだ試験だ。

天界の音色は、邪悪な者にとって、耐えられない苦しみ、騒音でしかない。

「そうですね・・」

グルシアのその言葉で、魔女の指はすいっと離れた。

「奥様はピアノの側にどうぞ」

サリエルは、ピアノの脇にあるパイプ椅子に座るよう促した。

グルシアはピアノの前に座り、響きを確認した。

ポーーーン

教会の高い天井は残響時間が長い。

ミサ曲・・
サリエルは、腕組みをしてうなずいている。

グルシアは魔女を見た。
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