不穏ラジオ−この番組ではみんなの秘密を暴露します−
日常
いつものように大谷高校の制服に着替えてキッチンテーブルにつく。
ーブルの上に用意されている朝ごはんもお味噌汁に漬物に焼き魚と、いつもと同じメニューだ。
違うのは昨日は魚は白身だったけれど、今日は赤み魚に変わっていることくらい。

これを見ると今日も1日、また同じような日が始まるのだと私の心は憂鬱になる。
かと言って朝食に文句をつければ母親から『じゃあ自分で作ってみなさい』と言われることが目に見えているから、私はなにも言わずに黙々と食事を続ける。

私よりも1時間ほど遅く家を出るお父さんはまだ起き出していない。
ダイニングを続いているリビングのテレビはつけっぱなしになっていて、さっきから朝のニュース番組の音が聞こえてくる。
母親はテレビをまるでラジオのように聞くのが好きなようだった。
夜の家族団らんの時以外にもテレビは垂れ流しになっていて、母親は家の用事や趣味の編み物をしながら耳を傾けていることが多い。


「やぁねぇ、鳥殺しですって」


母親がしかめっ面を浮かべたので私は視線だけでテレビを見る。
今は地域ニュースの時間のようで、最近地元で起こった出来事が報道されている。

普段は幼稚園でお祭りがあったとか、稚魚を川に放流したとか、そういうニュースが多い中今日は少しだけ違うみたいだ。
男性アナウンサーが深刻そうな表情で住宅街を歩いている。


『鳥殺しがあったのは昨日の朝から昼にかけての間だと思われます。殺されたのはハトで、付近の公園ではよく目撃されていた鳥だと言います』


テレビに映っている住宅街はここからそう離れていない。
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