【完結】鍵をかけた君との恋
 数時間後。ピコンと私の目覚ましになったのは、勇太君からのメールだった。

『乃亜、あけましておめでとう。今年もよろしくね』

 文面を見るだけで、即座に罪悪感で包まれた。


「おめでとう、乃亜ちゃん」

 居間に顔を出すと、エプロン姿の奈緒さんが父に雑煮をよそっていた。

「初詣に行ってたの?今朝早くに帰ってきたのかしら。ずいぶん寝たねえ」

 どこで、誰と、連絡くらい寄越しなさい。そんなことを言われないのは、奈緒さんにその権限がないからだ。

「お腹減ってる?」

 彼女のその言葉に、私は台所に目をやった。ほっと胸を撫で下ろしたのは、今朝見た鍋がまだそこにあったから。

「お、お蕎麦食べたいっ」
「え?」
「昨日のお蕎麦、奈緒さんが作ってくれたお蕎麦が食べたいっ」

 その瞬間、桜の開花と見紛うほどに、ぱっと明るくなる彼女の表情。

「うんっ!温め直すから、ちょっと待っててねっ」

 鍋に火をかけている最中も、ずっと笑顔の彼女は可愛かった。
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