【完結】鍵をかけた君との恋
「ねえ、乃亜」

 校舎からふたり目を逸らし、顔を合わせる。思い出話に緩んだ陸の口元が真っ直ぐに結ばれるとほぼ同時、彼の眼差しも、真剣そのものになった。

 陸の手で、ゆっくりと頬を覆われた。陸の目で、真っ直ぐと見つめられた。その瞳が閉じた時、唇と唇が重なった。

 ここが外じゃなかったら。ここが陸の部屋だったならば。理性のきかなくなった私達は、また丸ごと愛し合ってしまうのだろう。
 陸が好き。私はずっと、彼が好き。一生だって一緒にいたい。
 
 おもむろに、唇を離した陸は言った。

「最後に、聞く……」

 頬はまだ、彼の手の平の中。

「俺は、乃亜の恋人になれないの?」

 陸の憂いに満ちた瞳の奥で、決意が見えた。

「乃亜の心配ごと全部掻っさらうくらいの覚悟、俺はある。終わらないし終わらせない。俺は乃亜を手放さない」

 ひとつひとつの言葉が刺さる。段々と息がしづらくなるのは、その言葉達が胸を埋めていくからだ。

「俺を信じて欲しい。俺は絶対、乃亜の前からいなくならない。ずっと側にいる、一生守る。俺は昔から、乃亜しか見ていないんだよ。大好きな乃亜しか」

 大好きな人に大好きだと言われて、涙が出そうになった。

「乃亜。俺と付き合って」

 陸は私の大切な人。いつまでも隣で笑いあっていたい。だから、ここで陸に身を委ねれば──


「陸とは、付き合えない……」

 いつかきっと、終わってしまう。
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