【完結】鍵をかけた君との恋
君の気持ち
「よっしゃ!ダブル!」

 陸はボーリングが上手だ。

「ハンデいるか、ハンデッ」

 次々と続くストライクに、彼は心底楽しそうだった。
 

「ほら見て、乃亜。俺のスコアシート」

 ボーリング場と同じ館内にあるゲームセンターのベンチで、彼は私の視界いっぱいにそれを広げてきた。

「わ、わかったってば。陸の勝ち勝ち」

 結果なんて容易に想像できていた。勝敗云々は関係ない。今こうして陸と過ごすことに意味がある。
 満足そうに、用紙を眺める陸に私は聞く。

「バーベキュー、明日だよね。どこでやるの?」
「何。来るのお前」
「い、行かないよっ。べつに、言いたくないならいいやっ」

 目を逸らした私の頭、くるっと丸められたスコアシートがぽんと乗る。

「場所は日の出運動公園。九時集合、十六時解散。男女計四十五人参加。俺はクラスの奴等と一緒に行く。二次会あるけど行かない、帰ってくる」

 乗せられたものを私が退かすと、陸は優しく微笑んだ。

「満足?」

 ただ知りたいだけ。その気持ちを悟ってくれた。

「は、はい……」
「じゃあ遊ぶか。ゲーセン、ゲーセンッ」

 いつだって私の機嫌を損ねるのは陸で、直すのも陸。こうして気分転換だってしてくれる。彼は私の取り扱い説明書でも、持っているのだろうか。
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