【完結】鍵をかけた君との恋
「おしまーい!今日はもう無理っ!」

 クッションを枕代わりに、床へごろんと寝そべった。そんな私を見て、彼もペンを置いた。

「俺も、おーしまいっ」

 天井を見つめたまま、私は聞いた。

「勇太君って、勉強が好きなの?」

 テーブルの上を片しながら、彼は答える。

「好きだよ。勉強はすればするほど身になるから、ある意味自分の思い通りになる。それよりむしろ、努力したって手に入らないことの方が、よっぽど辛いし嫌いかな」

 なるほどと、どこか納得してしまう。けれど。

「私は勉強苦手……」

 両手で顔を覆えば視界は闇に。脳内ではぐるぐると、未だにAが彷徨っている。

「乃亜」

 指の隙間から光が差し込んできたかと思ったら、それは彼が、私の指を一本ずつ剥がしているせいだった。闇から一転、彼が広がる。

「乃亜、好きだよ」

 愛の呟きと同時に重なる唇。彼の香りが鼻尖をつく。抵抗せず、そのキスに応えていると、彼はぺろりと舌を見せた。

「なんか甘いね、乃亜の口」
「そう?あ、リップかも。パッケージにぶどうのマークついてたから」
「んー。ぶどうもあるけど……」
「他の味もする?」

 目と目を合わせ、静寂が存分に流れていく。にこっと微笑み彼は言う。

「わかった、乃亜が甘いんだ」

 再び落とされる、キス。

 彼の舌を伝って、私の中にも侵入してくるぶどう味。騒ぎ出した心臓がバレぬよう、私はふたりの胸の間に手を添えた。
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