【完結】鍵をかけた君との恋
「乃亜ちゃん、お湯沸いたわよ」

 翌朝。ポンッというケトルの合図と共に、奈緒(なお)さんは言った。

「コーヒー注いじゃうね」

 半袖でも汗ばむこんな朝でさえ、私はホットを好む。

 パジャマ姿のままに食卓へ着くと、コトンと置かれたマグカップ。奈緒さんは対面に腰を下ろした。

「今日の夕ご飯、何か作っておこうか?お父さんは、私のお店に来るって言ってたから」
「いいや、悪いし。適当に買って済ますよ」
「そう……夕飯代、ある?」
「うん。先週お父さんにもらった残りがまだあるから」

 湯気立つコーヒーに口をつけ、私は興味もないワイドショーへと目をやった。
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