【完結】鍵をかけた君との恋
「あーあっ。もっと早くに乃亜と付き合いたかったな」

 運ばれてきたパスタをフォークに巻きつけていると、勇太君が残念そうに言った。

「もし受験生じゃなかったら、もっと乃亜とたくさん遊べたのにって思うよ。勉強は好きだけど、乃亜ともずっとこうしていたい」

 ストレートな想いを口にする彼に、胸がはむっと啄まれる。

「一年の時に乃亜と仲良くなれなかったのが失敗だな。何組にいたの?」
「D組。勇太君は?」
「俺はA組。くそー。AとDじゃ、体育の授業も一緒じゃないもんなあっ」

 学級委員で優等生の彼。こんなにも悔しそうな顔は、初めて見る。

「中二の時、俺のクラスの森と付き合ってたでしょ?」
「うん。二ヶ月くらいかなあ?」
「その時クラスに時々来る乃亜を見て、可愛いなって思ってたんだよね。森の彼女だったから、恋愛対象ではないけど」

 照れた。可愛いという単語は、女ならば誰でも嬉しく思う。

 頬杖をついた彼は、瞼で半分隠れた瞳を私へ向けた。

「食べ終わったから、乃亜でも見てよっと」

 そう堂々と宣告されて、私の顔は熱くなる。
 急いで食べた。口元を隠して食べた。それでも喉から先がうまく通らずに、そこで時間を食ってしまう。そんな私に彼はトドメを刺す。

「可愛いなあっ、もうっ」
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