冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
 大きな手はさらにうなじをつうと這い、乱れたあさひの髪を耳にかける。凌士の体はしっとりと汗ばんでいた。きっとあさひもおなじだ。

 凌士に抱かれるとき、あさひはいつも体のすべてを持っていかれるように思う。

 丸ごと食べられそうな錯覚を起こすときもある。

(だけど、やっぱり今日はなにか違う。なんで……?)

 うしろからぴたりと覆い被さった凌士に耳を喰まれ、やわらかな胸に指を沈められる。
 背中のくぼみに沿って、肌に薄い唇の判を押される。潤みきった場所を、凌士が貫く。
 いいようのない喜悦にのみこまれる。
 甘やかな電流が全身を走り抜ける。

 体じゅうどこもかしこも、凌士の形に合わせて溶けていくようだ。深い酩酊が続いて、一向に覚めない。

「あ、あ……っ」

 立て続けに艶めいた声が口をついたとき、あさひは唐突に理解した。体じゅうが、かあっと熱を持つ。

(わかった。凌士さんのすべてで、愛してると伝えられてるみたいだから)

 一度気づくと、どこにどう触れられても、ただただ「愛している」の言葉を受け取ってしまう。
 とうとうあさひの意識が弾けたとき、凌士が愉しそうに目を細めた。

「あさひも、今日は早いな?」
「だっ……て、凌士さんが、すごく深く……するから」

 切れ切れにどうにかそれだけ言って、あさひはシーツにぐったりと身を沈める。

「さっそく、結婚の準備だな。あさひの両親にもご挨拶したい」
「はい……でも凌士さん、今はまずぎゅっとして——」

 言い終わらないうちに、あさひは覆い被さった凌士の熱い体に、強く抱きすくめられた。

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