冷徹御曹司は想い続けた傷心部下を激愛で囲って離さない
 ベッドで積極的になったことはある。けれど、あれは体を重ねる熱に浮かされていたからだった。今も、酔いが回った勢いも手伝ってのことで。

 普段は凌士に抱きしめられて、あさひはその腕のなかで安心していたけれど。

「わたしも凌士さんに、わたしを選んだことを後悔させないように努力します。だから凌士さんも安心してくださいね」

 車内で窮屈な姿勢になるのもかまわず、あさひはさらに強く凌士を抱きしめる。
 凌士がため息をついた。

「安心か。努力は不要だが、俺はいつまでもやきもきするだろうから、頼むぞ」
「やきもき? どうして」

「俺が本気になった女だぞ。ほかの男も惹かれるに決まっている。どれだけ芽を潰せばいいのか、見当もつかない。だが、そいつらよりあさひを愛するのは俺だ。覚えておけ」
「凌士さんもですよ。わたしだって、誰よりも凌士さんを愛していますから」

 あさひの肩に、凌士の顔が埋められた。春先のにおいをまとった髪が、あさひの首筋を撫でる。
 強く腰を抱かれ、コートから覗く首筋の素肌を吸い立てられる。
 お酒の酔いに加えて、きつく吸われた首筋から体がじんと痺れていく。

 凌士が体を離したとき、あさひはふたたび自分から凌士を引き寄せ、唇を重ねた。

 車の中で水音が響く。凌士が、くたりと力が抜けたあさひの手をとり、婚約指輪に目を細める。

「会社にも報告するからな」
「……はい」
「酔っ払いめ。今日はただ寝かされるだけだと思うなよ」

 凌士が酩酊したあさひに呆れつつ、早くもその目に熱情を灯した。

 
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