わたしだけの吸血鬼
運命の日

 夜紅さんが吸血鬼だと思い始めてから、私の世界はまた少しだけ変わった。

 この世には私の理解の及ばない人ならざる者が存在することを知り、平凡で穏やかな日々が終わりを告げた。

 彼らはひっそりと、でも確かに私達の周りを侵蝕していた。
 例えば私の隣にも……。

「教科書忘れちゃった。悪いけど見せてくれる?」

 士門くんは隣の席に座る私にニコリと微笑みかけた。口では悪いと言っているが、まったく悪いと思ってなさそう。

「……いいよ」

 私は机同士をくっつけ、日本史の教科書を真ん中に置いた。

 チャイムが鳴り授業が始まると、結美先生が教科書の内容について解説していく。

 美しい横顔に見惚れてしまわぬよう気を張る私とは対照的に、士門くんはリラックスした様子でノートを取っていた。

 屋上での会話から察するに、士門くんも吸血鬼に違いない。
 ただし、士門くんの瞳は夜紅さんのように紅くない。見た目の年齢だってかけ離れている。
 
 同じ吸血鬼でも個体差があるということ?

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