わたしだけの吸血鬼

「流衣」
「ひゃい!」

 私はビクッと肩を震わせ、思わず姿勢を正した。
 ずっと隠し通せていたと思っていた恋心は夜紅さんの気持ちひとつでどうにでもなる。

 夜紅さんは私の耳に顔を寄せるとこう言った。

「……俺以外の吸血鬼に迂闊に近づくな」

 耳元で甘やかに囁かれ、きゅうっと胸が苦しくなった。消えたはずの吸血痕が甘い熱を放ち、もっと血を吸って欲しいと疼き始める。

「夜紅さんこそ……!他の人の血を吸ったりしたらダメですからね?」
「当たり前だろう?俺は流衣だけの吸血鬼だ」
 
 入道雲が風を受け、青空を優雅に流れていく。あの雲はどこに行き、誰と出逢うのだろう。

 本格的な夏が始まろうとしている。

 私はこれからも夜紅さんと普通ではないこの世界を生きていくのだ。







おわり

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