キケンな生徒指導
もうひとつの顔
ようやく、夏休みに入った。

今夜は親が留守なので、家でのんびりしたい気持ちもあるが、留守だからこそ、堂々と出て行ける。

変装を済ませると、馴染みの店へと、ヒールの音を鳴らして向かう。

「ハーイ!」

ドアを開けて満面の笑みで、店内のスタッフに手を振る。

「あ、ジャスミンちゃん!久しぶりじゃん。どうしてたの?」

ジャスミンというのが、ここでのニックネーム。

単に、茉莉花を別名にしただけだが、ここのスタッフや常連客は誰も、私の本名を知らないし、探るような野暮な真似もしない。

どうしてたの?と聞かれても、毎日高校に通っていた、などと言えるはずもなく。

「仕事がちょっと忙しかったの」

名前はニックネーム、年齢も逆サバを読んで22才ということにしてある。

丁度20才だと怪しまれそうだし、よくも悪くも私は老け顔だ。

学校では、校則違反ひとつせず、黒髪にノーメイクで、スカートも膝丈にしてある。
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