炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*

幼なじみ

 リアムとジーンが南門に向かうと、イライジャが外へ出て行こうとしていた。

「こんな時間に、なにをしている」

 駆け寄りながら声をかけると、イライジャは驚き、後ろになにかを隠した。

「イライジャ、どこへ行くつもりだ」
「結界に、異変があったと知らせがあったので、見て参ります」
「ほう。白狼より情報が速いな。なぜだ」
「それは……」

 言いながらイライジャがちらりと鉄門を見る。リアムは外に出て行けないように、門を瞬時に氷漬けにした。

「おまえがこちらの情報を流しているからだろ」

 門を見ていた彼は、振り返った。

「オリバーと通じたのは、クレアの命日でフルラに向かったころか」

『――魔鉱石を探る者がいます。クレアの命日を狙ってなにか仕掛けてくると情報が』

 そう言って、報告してきたのはイライジャだった。

「違います!」

 イライジャは、切羽詰まった顔で近寄ってきた。すっと、ジーンがリアムの前に出る。

「陛下。危険です、おさがりください」
「大丈夫だ。おまえがさがれ」
 
 リアムは拳くらいの雹を空中にいくつか形成すると、イライジャに向かって投げ飛ばした。彼は目を見張ったあとすぐに反応した。すべての飛礫(つぶて)を防いでいく。

「聞いてください、私はッ……!」

 彼の声を無視して、リアムは一気に距離を縮めた。
防御(ガード)が甘い、イライジャの腹部に膝蹴りを打ちこむ。

 がはっと声を漏らして前屈みに苦しむ彼の手から小さな袋を奪うと、中を確認した。
 
 予想していた物が入っていて、リアムは顔をしかめた。
 袋ごと投げ捨てると、碧いサファイアの原石は、煌めきながら白い雪の上に散らばった。
 
 リアムは右手を固く握ると、イライジャの頬を思いっきり殴った。
 背が高く、騎士として鍛えあげている彼はよろめいたが、倒れることなくその場に踏み留まった。顔だけ横に向け、雪で白い大地に血と唾を吐き捨てる。
 もう一発殴ろうと拳を振りかざすと、イライジャはまっすぐリアムを見た。

「……私の主は、陛下。リアムさまです」

 彼は、崩れるように跪いた。
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