炎の魔女と氷の皇帝＊転生したら弟子と契約結婚をすることになりました＊

「見抜かれていたんですね……」
「オリバーの目的はなんだ」
「陛下の代わりに、この国の皇帝になることです」
　
リアムは眉根を寄せた。

「オリバーの目的が皇帝の座？　本当に、それだけか？」
「……わかりません。あの方のことは、私には把握できません」

　イライジャは、思い詰めた顔で下を向いてしまった。白狼の遠吠えがまた聞こえ、リアムは立ちあがった。

「呼んでいる。おまえの処分はあとだ」
　
　立ち去ろうとすると、「陛下のためです！」とイライジャが声で追いすがった。

「陛下が、結界を作ったり、無茶ばかりするからです。このままでは陛下が死んでしまう。死んで欲しくない。だから、オリバー大公殿下を探し出して、復活までさせてしまった者と、手を組んだのです！」

「復活ってなに？　どういうこと？」

　ジーンが、イライジャに聞いた。

「オリバー大公殿下は約八年ほど、冷凍睡眠(コールドスリープ)していたんです」

　それを聞いたジーンが「そういうことか！」と叫んだ。

「だから今まで消息がわからなかったんですね」
「長い眠りから目覚めたものの、オリバー大公殿下はしばらくのあいだ動けなかったそうです」

　イライジャは、雪の上に散らばるサファイアを見て、いきなり目を見開いた。

「……しまった。いけない。陛下、急いだほうがいいです」
「どういことだ」

「オリバーの狙いは、魔鉱石と炎の鳥。そして、魔女です。ミーシャさまが、危ない！」

　リアムは顔をしかめた。

「ミーシャをどうするつもりだ」
「炎の魔女に、氷の宮殿を滅ぼしてもらうと、言ってました」
「滅ぼす？　魔女を使って？　そんなことをすれば過去を繰りかえ……そうか。そういうことか」

オリバーの狙いは、魔女。そして、ミーシャだとわかり、腹の奥底から憎しみが迫り上がってくるのを感じた。
リアムは、怒りで震える手をぎゅっと握る。

ジーンに「イライジャを任せる」とだけ伝え、駆け出した。
　ミーシャが一人で待つ部屋に向かって。