炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
しかも自分で焼いて短くなっていた部分も、元の長さに戻っている。ミーシャは鏡に映る自分を見つめたまま、固まった。

「……どうしよう。どうしよう?」
 
 部屋の中をおろおろしていると、白狼が早くしろと吠えた。

「そ、そうね。今はとりあえず、二人を追いかけなくちゃ。……この格好で?」

 それはとても事態を悪くする気がした。とりあえず気休めで、「よし」といいながらフードを被る。

「ち、力も、戻っていたりしないかなー。なんてね……」

 軽い気持ちで手をかざすと、思いっきり炎柱が発生した。あわてて火を消す。

 氷の壁を溶かしたばかりであたりが濡れていたおかげで、絨毯を少し焦がしただけですんだ。ほっと胸をなでおろす。

「魔力も、戻ってるのね……」

 見た目だけじゃなく、魔力もクレアと同等量あり、扱うこともできるようだった。

「炎の鳥。おいで」

 試しにミーシャが呼ぶと、目の前に自分と同じ大きさの炎の鳥があらわれた。

「これは、もう、間違いないわね」

 ミーシャは待ちくたびれてどっか行ってしまった白狼を追いかけ、バルコニーに出た。炎の鳥をもっと大きくして、その背にミーシャは乗った。

「お願い。リアムのもとへ連れて行って」
 
 炎の精霊獣は、朱く燃える大きな翼を広げると、空に向かって力強く飛び立った。
 


 ミーシャを乗せた炎の鳥は、闇を切り裂き進んでいく。ときどき粉雪が顔にあたるが関係ない。
 風を心地よく感じながら、首からさげている魔鉱石を握った。

「皮肉なものね。リアムを守るために作った魔鉱石が、結果、私に力を与えてくれている」

 急に炎の鳥が滑空しだした。もう、リアムたちに追いついたらしい。

 そこは青白く発光する流氷の結界のそばで、オリバーを追いこんだリアムが、今まさにとどめを刺そうとしている瞬間だった。

 ミーシャが上空にいると思ってもいないのだろう。こっちにまったく気づくようすはない。

 ――とめなくちゃ! 

炎の鳥を操り急降下すると、ふわりと、二人の前に降り立った。


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