炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
リアムといると心が温かく、満たされていく。
 好きの気持ちは枯れることがない泉のように次々に湧いてくる。愛しくて、切ない。離れたくない。
 彼以外にはなにもいらない。だけど……

「リアム!……そろそろ、本当に止まって。みんなが待ってる」
「子どもを望んでいる者ばかりだ。待たせておけ」
「だめ!」
「これ、脱がしていい?」

 首を振って拒んでも勝手にボタンを外し、人の服を脱がしにかかるリアムの手を必死にとめるが、彼の方が一枚上手だ。
 あらわになった肌にリアムが触れた。包み込むような温かい手に、体の奥が痺れる。

「寒い?」

 与えられる初めての感覚に思わず小さく声が漏れると、ミーシャのようすにリアムは敏感に反応した。

『冷』への耐性はサファイア魔鉱石を使うことで自分が付与しているのに、それでも気づかってくれる。
 どんなときでもやさしい彼の首筋にミーシャはしがみついた。

「寒くないよ。ありがとう」
「つらかったら言って」

 ミーシャは苦笑いを浮かべた。

「リアム、聞いて。私はあなたを寵姫に傾倒する皇帝にはしません」

 ――リアムが好き。だからこそ、彼を鎮めるのも私の役目。

 指には彼からもらった小さな魔鉱石がある。ミーシャは炎の鳥を呼んだ。
 タイミング良く外でリアムとミーシャを呼ぶジーンの声が聞こえてきた。探しに来たらしい。あまりにもうるさくて顔をあげたリアムは、ふて腐れていた。

「煽るだけ煽っておいて、お預けか。我が妻はやはり、酷いな……」
「ごめんなさい。そんなつもりはなかった……て、煽ってなんかいない! 勝手に暴走したのはリアムでしょ?」
「ずっときみが欲しくて、我慢していたんだ。ミーシャを失わないで済むのならと思うと、箍が外れた」

 しぶしぶと言ったようすで、自分で乱したミーシャの服を直していく。

「あなたの子ども、いっぱい産みたいもの。いちいち死んでなんかいられない」

 視線をあげたリアムは嬉しそうに、少しはにかむように笑った。
 
 ――氷の皇帝のこんな甘い顔、私しか知らない。リアムは私だけのものだ。

 かつて幼い弟子だった彼。今は頼もしい大人になった彼をミーシャは、愛しい気持ちで胸をいっぱいにして見つめた。

「……ミーシャ。だから煽るなって。その顔反則。蕩けるような顔で見つめられると……」
「わかった! 早くみんなのところへ行きましょう」

 ミーシャは彼の腕からするりと逃げ落ちると、外にいるジーン向かって「ここにいます!」と声を張った。
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