ひまわり畑には恋する乙女が住んでいる
♦︎♦︎♦︎

「おい、照、照」

「うわっ、なんだよ、じいちゃん」

気づくと、すぐそばまで顔を覗き込んでいるじいちゃんがいた。

「さっきから、ぼーっと窓の外ばかり眺めおって。全く」

呆れたように言う、じいちゃん。

「仕方ないじゃないか、久しぶりに帰ってきた地元が活気付いて、しかもあんなに綺麗な花で溢れてるなんて」

一目見たって心が込められて大切に育てられたことがすぐ分かる花達。

あんなの見たら、夢中になってもしょうがない。と言おうとした言葉は途中でじいちゃんに遮られた。

「じゃあ、見に行くか?」

「は、見に行くってどう言うことだよ」

訳がわからずそう尋ねると、じいちゃんは愉快そうに笑った。

「俺の家からそう遠くない場所にあの花を育ててる温室がある。あそこの管理人とはちょいと知り合いなんだ。きっと見せてくれる」

行くだろう?と言われ、俺は頷いた。

子供の頃のこと、だなんて言ったが、あんなのただの強がりだ。

本当は今でも花屋になりたいと思っている。

花に対する情熱と知識だけは誰にも負けないと自負できる。

だがしかし、花に関する知識が多いだけで、経営に関する知識や社会的経験が圧倒的に足りない今の俺の状況からして絶対無理だ。

今、その人に会い話を聞いて、学べたら、就職先でたくさん稼ぎ、花屋になると言う夢を実現できるかもしれない。

そう考えた俺は、なんだか、管理人という人に会うのが楽しみになってきた。

そんな俺の気持ちをなんとなく察したらしいじいちゃんは、にやりと笑う。

「ちなみに、管理人はかなりのべっぴさんだぞ」

どう言う意味だ、とくびをかしげるも、じいちゃんはさらに笑みを深めこう言った。

「惚れるなよ」

「惚れねぇよ!」

盛大に突っ込むと、じいちゃんは何がおかしいのか大笑いし始めた。
「じゃあ、一旦ばあさんに挨拶してから行くぞ」

俺は、じいちゃんの言葉にひとつ頷くと笑みを溢した。
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