没落令嬢のおかしな運命~餌付けしたら溺愛されるなんて聞いてません!~


「忙しいのに急に時間を空けておくよう言ってくるし、次は人を鑑定士呼ばわりするのだな。まったく人使いの荒い魔法使いだ」
 そう言って颯爽と現れたのはエードリヒ様だった。
 エードリヒ様は足早にこちらまでやって来るとアル様の手のひらにある指輪をじっと眺める。そして招待客たちに聞こえるようはっきりとした声で告げた。
「この指輪が本物の秘宝かどうかだが、これは我が王家に伝わる指輪で間違いない」
「王子殿下、恐れながら申し上げますが本物だとどうして分かるのですか?」
 カリナ様が遠慮がちに尋ねるとエードリヒ様が人差し指を立てた。

「肖像画には完璧なものとして描かれているが人魚の涙は象嵌されているイベリスの花の一部がわざと欠けている。これは王族の間でしか知られていない事実だから誰かが模造品を作ったとしても真似することはできないはずだ。だからこそ、これが本物の秘宝であると証明ができる」
 王族であるエードリヒ様が言うのだから説得力は充分にあった。今まで私に向けられていたはずの敵意が徐々にカリナ様へと集中していく。
 アル様とエードリヒ様の登場によって風向きが一気に変わり始める。
 焦ったカリナ様は尚も否定した。

< 221 / 238 >

この作品をシェア

pagetop