緋色の徴(しるし) リリカとサリエル(魔法の恋の行方シリーズ11)
玄関には、華奢なピンヒールの
サンダルが置いてあるのに気が付いた。

誰か来ているのか?
グルシアが、靴を脱ごうとした時、

「おっかえりーーー!」

アレクサンドラが、リビングから紅茶ポットを手に顔を出した。

「誰か・・・来ているの?」

グルシアが聞くと、アレクサンドラは思案気に

「うん、ちょっとね。
相談事があってさ、ちょうどよかった。
ダーリンにも聞いて欲しいな」

「そう、誰なの?あと、これお土産ね」

グルシアは、手提げの袋をアレクサンドラに渡して、上着を脱ぎながら、リビングの扉を開けた。

そこは・・誰もいなかった。

テーブルにはアップルパイ、
飲みかけの紅茶があるだけだ。

強いシナモンとジンジャーの臭い・・!

「魔界の者かっ!!」

グルシアは、手首から黄金の長剣を出した。

「ちゃうよーー。魔女だけど、
今日は、相談で来ただけだから」

アレクサンドラは焦って、グルシアの背中のワイシャツを引っ張った。

グルシアが、急いでベランダに出たが、誰かいる気配もない。

「逃げたのか!!」

「うん、もぉ!!」

アレクサンドラは、ベランダの大きな鉢植えの前にしゃがみ込んだ。
< 11 / 52 >

この作品をシェア

pagetop