『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「ごめんっ、こんな大金、預かれない。ってか、怖くて無理っ」
「……フフッ、璃子さんらしい」
「っっっっホントに無理だからっ」

通帳を突き返した。
空き巣にでも入られたらと思っただけで、不眠症になるよ、絶対。

ポンポンと頭を優しく撫でる彼。
速攻で拒否してるのに、嫌な顔一つせずに優しく微笑み返してくれる。

「じゃあ、俺が持ってますから、必要な時は言って下さい」

指輪を着けてるだけでも恐縮するのに……。

私の知らない彼の顔がどんどん明らかになる。
まだまだ知らないことだらけなんだろうけど。
そのベールを一つ一つ剥がしていくのも、かなりドキドキ感があるような。

「璃子さん」

煽情的な視線で見つめられ、体が熱を帯びたみたいに疼き始めちゃうじゃない。

少し強引な口づけなのに、触れた先はとても優しくて。
ちゃんと私の全てを包み込むみたいに甘く蕩けさせてくれる。

「……んっ……っふぁっ」

そっと離された唇。
色気たっぷりに濡れそぼった彼の唇が視界に映る。
再び彼の影がゆっくりと降って来て、静かに瞼を閉じた。

………ん?
何も起こらない。
あれ?
キスするんじゃないの?

ゆっくりと瞼を押し上げると、楽しそうに意地悪っぽく微笑む彼が。

「キス、して欲しいの?」
「っ……別にっ」
「キスしてって顔に書いてあるけど?」
「っっ……」
「だったら、強請ってみろよ」
「っ?!!」
「可愛くおねだりできたら、してやるから」
「っ……」

豹変したよっ!
ドSでエロい彼に。

「……して」
「フフッ、“シて”だなんて、璃子さんエロいなぁ~」
「そのシてじゃなくて、キスしてのして!だからっ」
「あーはいはい、キスもその先もシてあげるよ、たっぷりとね♪」

これから毎日こんな危険で甘く蕩ける日が続くのかと思うと、幸せ以外の何物でもないよね……。

~FIN~

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