『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

「元彼と別れてまだ一年しか経ってないから、まだ完全に癒えてないだろうなぁと思って。だから、璃子さんが俺に心預けてくれるまで、じっと待つつもりなんだけど」
「っ……」
「前も言ったけど、俺、待て!ができるタイプじゃないんで。今みたいにおやつチラつかせられたら、全力で奪いに行くよ?」
「っっっ~~ッ」

やっぱりまだ『結婚』を意識してるわけじゃなさそう。
だけど確実に、一カ月前よりは前向きに歩き出してる。

「年末年始は旅館にとって凄く忙しい時期で。八神くんを連れ帰っても、構ってあげれないと思うの」
「……ん」
「緊急用に必ず数室予備で取っておくことになってるから、その部屋に泊めてあげれると思うけど」
「………」
「頻繁に会ったりだとか、小まめな連絡は取れないかも」
「……ん」
「だから、せめて……温泉でもと思ったんだけど」
「……そっか」
「ごめんね」

深い意味はなかったらしい。
それでも、実家に連れて行ってもいいと思えるほどの人柄だと認めて貰えたのなら、結果オーライなのかな?

「その旅館の仕事って、俺でも手伝えそう?」
「え?」
「掃除とか食器の片付けとか。せっかくだし、手伝う方がよくない?」
「あ、いや……それは間に合ってるというか」
「忙しくて璃子さん帰省するんでしょ?」
「っ……、そうなんだけど」
「宿泊費用もちゃんと払うよ?」
「それは、ホントに大丈夫だからっ」
「じゃあ、宿泊費の代わりに体で返す」
「ぅっっ……」
「ね?」

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