『執愛婚』~クリーミー系ワンコな部下がアブナイ男に豹変しました

夕食を食べ終えて、リビングでまったりとDVDを観ながらちょっとラブラブな感じになっていると。

「璃子さんに言わなくちゃいけないこと、あるんですけど」
「ん?……何?」

手にしていたビールをテーブルに置いて、真剣な表情で座り直した彼。
私も手にしていたカップをテーブルに置いて、彼と向き合った。

「俺、移動願出してあります」
「……え?」
「ずっと璃子さんの下にいたら、璃子さんに気を遣わせちゃいますし、俺が嫌なんで」
「……別に私は構わないのに」
「もしかしたら、系列企業に転勤かもしれないですけど、それでも俺の傍にいてくれますか?」
「………ん」
「ホントに?」
「ん」
「それ聞いて、安心した」

ふわっと長い腕に包まれる。
職場が変わっても、この気持ちは変わらない。

だって、仕事をしている時の彼を好きになったんじゃない。
仕事をしている彼ももちろん好きだけど。
オフの時の彼に癒されているから。

「誕生日プレゼント、何が欲しいですか?」
「え?」
「来週でしょ」
「知ってたの?」
「当たり前でしょ」
「来て欲しくない三十だしね~、特別何かってのもなんかね~」
「じゃあ、その日、連れて行きたい所あるんで、そこに一緒に行って貰えませんか?」
「……ん、いいよ~」

何かを期待しているわけじゃない。
ただ隣りにいてくれるだけでいい。
一人で過ごさなくていい、ただそれだけで満足だよ。

もうあれもこれも欲をかくのには、正直疲れた。
今は、この心地いい関係ができるだけ長く続けばいいと思ってる。

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