初恋タイムトラベル
 ケイタに電話したのは、賭けみたいなものだった。

 先日、部屋の整理をしていたら未開封の段ボール箱を見つけた。この家に引っ越してきてから10年間、押入れの奥にずっとずっと仕舞い込んでいたものだ。

 悩みに悩んで捨てられなかった思い出の品々……昔の写真や、手紙、制服など。それらをひとつ、ひとつ見ていけば、眠っていた記憶がまざまざと蘇る。

 私はあの街で過ごした輝かしい日々を思い出して、それで、どうしようもなくケイタに会いたくなった。

ーー10年間、1度も連絡を取っていなかった幼馴染に。

「そういえば……!」

 記憶が正しければ必要な情報はそこにあるはず、と物色していた段ボール箱を逆さまにひっくり返し、当時使っていた手帳を探し当てた。

 使い込んで薄汚れている手帳を開けば、友人と撮った沢山のプリクラがずらりと並んでいる。懐かしいような、恥ずかしいような……思わず手が止まってしまう。
 
「これは後でゆっくりと見ることにして……あった!」

 アドレスのページをペラペラと捲ると。欲しい情報はすぐに見つかった。
 家族や友人のものと並んで、ケイタの電話番号も、そこに記されていたのである。

 中学生の頃、私は携帯電話を持たせてもらえなかったので、連絡先は全て手帳に書き留めていたのだ。

 私は考えるより先に、ポケットからスマートフォンを取り出し、震える指でその番号を押す。 

 ほとんど賭けだった。

 プルプルプル、と呼び出し音が続く中、祈るような気持ちで応答を待つ。

お願い、お願い、出て。
やっぱり出ないで。
でも、声だけでも聞きたい。

 そんな自分を、バカバカしい、と嘲笑うもう1人の自分もいた。

 だって、10年も経てば、電話番号が変わっているかもしれない。変わっていなくても、知らない番号からの着信を不審に思って、出てくれないかもしれない。出てくれたとしても、突然の電話を迷惑に思われるかもしれない。

 そもそも、私の存在なんか忘れているかもしれない。

 延々と鳴り続く呼び出し音を聞きながら、決心した。
 もしこの電話が繋がったら……そして私のことを覚えていてくれていたら……ケイタに会いに行こう、と。
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