七瀬先生、ここから先は違法です

七瀬「……顧問なら、俺がなりましたけど?」
 
教頭「な、七瀬先生?!」


 七瀬先生が、顔を出して平然と発言をする。
予想していなかった出来事に夏鈴も驚く。


七瀬「天文部の顧問は俺がやるんで、廃部はなしでー」

教頭「七瀬先生、あなた、私がいくら頼み込んでも『部活動の顧問なんて死んでもやらないっす』と顧問になるのを断り続けてましたよね?」

七瀬「そうでしたっけー?」

 七瀬先生は教頭先生に気を使うことなく、いつもの気だるげで軽い口調で話す。

 七瀬先生は今まで顧問を担当することを頑なに拒否していた。それなのに、自ら顧問に名乗り出たので教頭は驚いている。

教頭「……いや、いきなり言われてもね?……職員会議で決まったことですから」

七瀬「わが校の教育理念はなんでしたっけ?教頭先生?」

教頭「……」

七瀬「『生徒の主体性を尊重する』でしたよね?……水原はどうしたい?このまま廃部になってもいいのか?」

夏鈴「そ、それは……」

夏鈴(廃部にしたくないって言ってもいいのかな?私の意見なんか言うより、教頭先生の言う通り、活動も少ない天文部は廃部の方がいいんじゃないかな……)

 夏鈴は教頭先生の顔色を伺う。廃部にしたくない気持ちと、自分の意見を言っていいのか分からなくて戸惑う。

 そんな夏鈴の考えを見透かしたように、七瀬先生は言葉を放つ。

七瀬「水原、いいんだよ?お前の気持ちを話していいんだからな?」

 七瀬先生の言葉が夏鈴の背中を押して、自分の気持ちを伝える勇気をくれた。
 
夏鈴「あ、あの……!は、廃部にはしたくないです……!お願いします」

 いつも周りの人を気にして、自分の気持ちを消してしまう夏鈴だが、勇気を振り絞って自分の気持ちを言葉にした。

教頭「……」

七瀬「……だそうなので、廃部はなしっていうことで~。まさか、教頭先生がわが校の校訓を忘れたりしませんよね?……生徒の主体性を尊重しましょう、ね?」

夏鈴「え、えっと、あの……」

七瀬「水原、行くぞ」
 
 なにか言いたげな教頭先生を置いて、そそくさとその場を後にした。
 夏鈴も七瀬先生の後を追いかける。

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