七瀬先生、ここから先は違法です

夏鈴「他の生徒の前でも、そのキャラでいけばいいのに……」

七瀬「そのキャラって?」

夏鈴「七瀬先生、いつもだるそうだし、口数も少ないし、笑わないじゃないですか……」
 
七瀬「馬鹿かよ、当たり前だろ? 好きな女にだけ態度違うに決まってんだろ」

夏鈴「は、恥ずかしくないですか?そんなこといってて……」

七瀬「全く恥ずかしくない。教師という立場じゃなかったら全校生徒の前で『愛してる』って言ってる」


夏鈴「あ、そ、そんな、嘘ばっかり……」


七瀬「嘘じゃねえよ。ドラマとかでは言葉なんかより抱きしめた方が愛が伝わるなんて言うけど……俺は立場上、抱きしめられないから、言葉で伝えるんだ」

 七瀬先生が真面目な顔で言うので、夏鈴はごくりと息を飲んだ。

夏鈴(七瀬先生が言う言葉はまっすぐで甘くて……どうしたって、私はキュンとしてしまう)

 ストレートに伝えられる言葉に、夏鈴はドキドキが止まらない。


夏鈴「……も、もう、だめです! それ以上は……わ、私の心臓が……ドキドキして破裂しそうです!」

 夏鈴は真っ赤に染まった顔を隠すように両手で覆った。

 七瀬先生は、そんな夏鈴に自然と手を伸ばす。あと数センチで触れる寸前で、ピタッと手が止まる。

 七瀬先生は触れたくなった衝動を抑え込んだ。

七瀬「……反則だぞ、水原」

夏鈴「へ?え?」

 
 夏鈴が七瀬先生に視線を向けると、今まで見たことがない表情だったので驚く。


七瀬「可愛すぎて、我慢すんの辛いんだけど?……はあー、触れちまいそうだったわ、あっぶねー、」

 ゴツゴツした男らしい大きな手で口元を隠しながら悶えている。隙間から見える頬は赤く染まる。

夏鈴(……七瀬先生が照れてる?……か、かわいい。七瀬先生の方が反則だ……)

 今まで見たことがない、七瀬先生が恥ずかしそうに赤くなる姿を見て、夏鈴のときめき数値が上がる。


夏鈴「七瀬先生、我慢してるんですか?」

夏鈴(ストレートに言葉で伝えてくるし、何も我慢しているようには……感じないけどな)

七瀬「ずっと我慢してるよ?好きな人がそばに居たら触れたいに決まってるだろ……」

夏鈴「……なっ、」

七瀬「星空の下幻想的な空間に二人きりで、そんな可愛い顔されたら…… 思春期の男だったらすぐ手出すぞ?」

夏鈴「そんなこと、ないと思いますよ?」

七瀬「……そんなことあんの!男はみんな好きな女に触れたくなる生き物なんだよ」

七瀬先生は深くため息を吐きながら言葉を続ける。

七瀬「なあー、だからあんまり可愛い顔しないで?我慢出来なくなるから……」

夏鈴「……っ」

甘えたような口調で話す七瀬先生を目の前にして、夏鈴の心拍数は上がる。


心拍数とドキドキし続ける気持ちを隠すように、夏鈴は七瀬先生からストロベリームーンに視線を移す。

夏鈴(大人の七瀬先生を、か、かわいいと思ってしまうなんて……)
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