運命の恋に秘された真実
心の底から悲しそうに泣く母を見ていると、胸が痛む。

少なくとも、不倫…ましてや、純くんのお父さんと、という線は薄そうだ。

もしかしたら、母は結婚というもの自体、望んでいなかったのかもしれない。

いつか母は言っていた。

「最近の若い人は自由だけどね、戦中生まれの私は、年頃になったら結婚しないと、周りがうるさくてどうしようもなかったのよ。独身主義を貫く女性は、そうそう居るものではなかったわ」

そんな風に言われると、父のことは愛していなかったのか?という気持ちにもなったが、大人になるにつれ、最愛の人と結婚して、ずっと幸せに…などということが、そうそうあるものではないこともわかり始めていた。

私のように、幼い頃の初恋の相手と、一度も拗れることなく、結婚秒読みということが、如何にレアケースかということも。

しかし、ここで初めて壁にぶつかってしまった。

もともと自己主張の強くない母が、泣いてまで離婚したいと言うのなら、受け入れるしかないだろう。
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