新そよ風に乗って 〜憧憬〜
目が覚めると、ベッドで寝ている自分に驚いて飛び起きたが、景色がぐるぐると回転しているように目が回り、そのまままた布団を掛けてベッドに横になってしまった。
どうしたんだっけ?
いまひとつ、昨日の記憶が曖昧で……。 確か、ホテルから高橋さんと一緒に此処まで帰って来たところまでは、覚えているんだけど……その後の記憶がところどころ抜けている。
頭が、ガンガンする。
飲み過ぎだ。
昨日、高橋さんに何か言ったんだろうか?
それに、高橋さんは何を話してくれたんだろう?
どうしよう。
最低だ。 
すっかり、記憶が飛んでいる。
あっ……。
ベッドの中で少し落ち着いて考えていると、とんでもないことを思い出してしまい、急いで布団を捲って自分の姿を確認した。
ホッ!
着衣の乱れはない。
待って。 
ということは……。 
高橋さんが言っていた、男の裸を見たいって言うのがどういうことかって。 そうなると、高橋さんのお臍は、見なかったってことなのかな?
酔った勢いで、お臍を見せてと言ってしまったことは覚えている。
本当に、お臍のところに黒子があるかどうか、どうしても確認したくて、そこのところだけは何故か鮮明に覚えていた。
いろんなことが頭の中を巡ってしまい、落ち着いて居られずにゆっくり起きあがり、きっと高橋さんが傍に置いてくれたと思われる、旅行のお泊まりセットが入っているバッグを開けた。
取り敢えず着替えだけでもしようと思ったが、益々、頭がガンガンしてそんな気力もなくなり、昨日の服のままだったがそのまま立ち上がった。
うぅっ。 
気持ち悪い……完全に二日酔いだよ。
静かにゲストルームのドアを開けてリビングに行くと、高橋さんはもう起きていて新聞を読んでいた。
「あ、あの、おはようございます」
「おはよう。 起きた?」
「はい。 すみません。私、昨日寝ちゃったみたいで……」
バツが悪くて、まともに高橋さんの顔が見られない。
「取り敢えず、着替えを持っているんだから、シャワーでも浴びてきたらどうだ? 二日酔いも、だいぶ抜けるぞ」
嘘。
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