胡蝶ミラへのエクスプレス






 鼻歌を歌う越智君に合わせて、自分もメロディーを口ずさむうちに大きな声で歌い始めて、二人で声を出して笑う。

「えっ越智君、まさかの音痴!?」

「わざと歌ったんだよ。本気で歌おうか?」

「なんか笑いそうな気がするんだけど」

「マジで音痴じゃないからな。え、今度カラオケ行く?」

 なんて言いながらも、大きな声で夏歌を歌う越智君の微妙な歌声に、あはははっと笑った。

「あやし~な~。よし、今度カラオケ行くか」

「俺より点数低かったら、しっかり謝ってもらうからなー」

 私が笑うと、越智君も笑う。

 車内が夏歌を掻き消すくらいの勢いで、二人の笑い声に満ちる瞬間。

 坂道を駆け上がる様子は、まるで自分たちの今の気持ちを表しているかのようだった。





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