初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜

第1章 秘めた想い

 住宅街の一角に忽然と現れる真っ白な外壁が眩しい4階建てのビル。 
 中堅アパレルメーカー『Change the living』の本社ビルだ。

 運動不足解消のため、階段で4階へ。
 廊下の窓から臨む公園のイチョウの葉が、だいぶ色づいてきた。

 冬はすぐそこまで来ている。
 つい、この間までは暑い暑いってふーふー言ってたのに。
 時の経つスピードが、ほんとに早すぎる。

 そんなことを思いながらプランナー室へと急ぐ。

 そこがわたし、久保朱利(あかり)の職場。
 専門学校を卒業して、3年間販売で揉まれ、念願のプランナーになって4年。今、27歳だ。

 先週まで再来年に向けた新ブランド立ち上げで、連日バタバタの大忙しだったが、ようやくめどが立って今週は小休止。
 オフィスも先週までの殺伐とした空気が一変して、いつになく穏やかだった。

「おはよう」
「あっ、朱利先輩。おはようございます」

 返事をしたのは、隣の席の、3年後輩の島崎麻央。
 この4月にプランナー室配属になったばかりの新米である。
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