初恋の呪縛〜もしもあの時、キスしていたら〜

第5章 忘れられなくてもかまわない

 
 とにかく、厄介な初恋だった。

 あの夜の高揚感とその後の失墜感。 

 初めて経験した、甘くてひりつく感情は、強烈な印象を残したまま、心の奥底に横たわった。

 普通なら、たとえ失恋で傷ついた記憶であっても、時間が風化してくれるものだろう。

 でも幸か不幸か、都築は今でもそばにいる。

 彼が結婚してからは、学生時代のように、ふたりで会ったり、飲みに行くようなことはしなくなったけれど、会社に行けば、嫌でも顔を合わせる。

 もちろん、わたしもただ都築を想いつづけていた訳ではない。
 
 他の人と付き合おうとしたこともある。

 販売員をしていた入社2年目の夏。
 バイトに来ていた大学生に告白されて何回かデートを重ねた。

 でも、都築を想っていたときの、あのジェットコースターに乗っているような激しい感情の浮き沈みを彼に対して感じることは一度もなかった。

 そんなふうに比べてばかりいたら、うまく行くはずがない。

 結局、3ヶ月で自然消滅した。
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