可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる
焦った顔をしているミランダに笑い掛けながら、自分でフワフワなタオルを取り自分で身体を拭く。



「私は普通の女じゃないから。
聖女とかそんな話は一旦置いておいて、そもそも私は普通の女じゃない。
王宮に来た時からこんな姿だったから信じて貰えないだろうけど、私はインソルドの村でチチを抜いて1番目に強い人間になってた。」



そう言ってからミランダのことをもう1度見る。



「仕方ないからドレスはちゃんと着る。
でももっと軽くて動きやすい物にして欲しい。
皇太子になったことでステル殿下の命を狙う奴がいるかもしれない。
それに皇太子になったことでステル殿下は前よりも動きにくくなっているはず。
場合によっては私が動くからドレスではない軽装も準備してて欲しい。」



「で、ですが・・・貴女は聖女で皇太子妃です・・・!!」



「それ以前に私はインソルドの女。
インソルドの女がどんな女かステル殿下もちゃんと知っている。」



「それはそうでしょうけど・・・。
ですが・・・」



必死な様子のミランダの姿を見て、優しく笑いながら聞いてみる。



「ミランダはステル殿下に国王になって貰いたいんだ?」



「それは・・・そういった発言は、私は出来かねます。」



「優秀な侍女長だね。
信頼出来る人間がもう1人見付けられてよかった。
この王宮も宮廷も腐り果ててるからね。
探せば信頼出来る人間がもっといるのかな?」



私が聞くとミランダは不安そうな顔になった。
皇太子妃の本来の役目ではなく“何か”をしようとしているのに気付いているから。



「大丈夫、ミランダ。
私は1度死んでるから。」



「1度死んでる・・・?」



「うん、この命が1度終わった。
今は次の人生の途中。
そしたら聖女になってステル殿下と結婚して驚いてるところだよ。」



そう答えてから両手を胸の真ん中に添えた。



「15歳の凍えるように寒い冬の日、私は1度この命を終えた。」



「ですが、今・・・」



「そう、生きてる。生かされたから。」



胸の真ん中を強く強く、押さえる。



「私は待っていた。
もう1度動き出したこの命で、でも子どもを作る機能は死んだままの身体で。
私はきっと、ステル殿下を待っていたんだと思う。」



この胸の真ん中に浮かび上がるヒヒンソウの刻印を指先で確認した。



「きっと、待っていたんだと思う。」



もう1度そう言ってからミランダに大笑いして言った。



「アイツと子作りしたら一瞬で妊娠しちゃいそう!!
その前にある程度整えたい!!
自分の子どもを殺されるわけにいかないから!!」




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