可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる
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物凄く驚いているモルダン騎士団長を見て、それからメルサのように可愛らしく笑っておいた。
「そういうことにしておいて?」
私がそうお願いをすると、モルダン騎士団長は面白そうに笑いながら頷き私に騎士のポーズをしてきた。
それを無視してステル殿下を見ると、ステル殿下が物凄く驚いた顔で私のことを見詰めている。
私が“ソソ”と呼んだことで“ルル”のことを思い出したのか・・・。
私が“ルル”だと分かったのか・・・。
バクバクと煩い心臓の音を聞きながらステル殿下のことを見詰めていると・・・
「第1騎士団の団長なのか・・・?」
そんなことを聞いてきた。
「そうだけど。」
「そんなに強くなったのか・・・?」
「聖女の力も潜在的にあったのではってクレドから言われた。
だから私は1年前には先代の“チチ”よりも強くなってた。」
「それは・・・物凄く強いな・・・。」
「うん。」
私の返事にステル殿下は感心したように頷くだけで、それ以上は何も言ってこなかった。
“ルル”のことは忘れてしまったらしい。
ステル殿下は10歳までしかインソルドにいなかった。
インソルドでは組織を作る教育、組織を指揮する教育、国王に必要な教育、そして魔獣と戦う教育はされてきた。
それらを持って王宮へと10歳の時に戻ったソソ。
黒髪持ちの幼いソソがこの腐り果てた場所で生き抜くことは凄く凄く大変だったはず。
魔獣とも違う別の悪いモノばかりのこの場所で。
「“ステル皇太子殿下”、王座の間にいらしてください。
1年前の魔獣の大群、そして今回の魔獣の大群を引き寄せたのは貴方のせいだとジルゴバート王弟殿下がお待ちです。」
モルダン騎士団長がステル殿下にそう言うと、ステル殿下は少しだけ吹き出した。
「貴方に“皇太子殿下”と初めて言われましたね。」
「俺はお前のことが大嫌いだからな。
でもいくらかお前を許せる気持ちにもなった。
俺が売った喧嘩を無視し続けてきたお前が初めて聖女様のことでムキになって。
戦や討伐以外で初めて血の通った男になった姿を見て、お前はお前で大変な人生だったということが俺の心にやっと落ちてきた。」
「その割にはクレハの討伐には近衛騎士団は動かなかったんですね。
ジルゴバート王弟殿下をお守りしていましたか?」
「王座の間には待機していたが、マドニス宰相が近衛騎士団を動かさなかった。」
ステル殿下からは騎士団を動かしているのはマドニス宰相だと聞いていた。
クラスト陛下の前の国王の時から宰相をしているというマドニス宰相。
ステル殿下も1年前に団長になってから顔を合わせるようになっただけで、そこまで関わりがないというマドニス宰相。
「マドニス宰相が“ここはステル皇太子殿下にお任せするように”と俺に指示を出してきた。
王都に兵だけを出し、“どんな厄災も祓える男になったと信じましょう”と王座の間の天井窓を強い目で見上げていたから俺も黙っていた。」
モルダン騎士団長が楽しそうに笑いながらそう言って、ステル殿下に向かって騎士のポーズをしてきた。
「お前が倒したのかその聖女様が倒したのかよく分からない戦いだったけどな!!!」
大きな声で笑うモルダン騎士団長に、ステル殿下は嬉しそうに笑いながら騎士のポーズをしていた。
「そういうことにしておいて?」
私がそうお願いをすると、モルダン騎士団長は面白そうに笑いながら頷き私に騎士のポーズをしてきた。
それを無視してステル殿下を見ると、ステル殿下が物凄く驚いた顔で私のことを見詰めている。
私が“ソソ”と呼んだことで“ルル”のことを思い出したのか・・・。
私が“ルル”だと分かったのか・・・。
バクバクと煩い心臓の音を聞きながらステル殿下のことを見詰めていると・・・
「第1騎士団の団長なのか・・・?」
そんなことを聞いてきた。
「そうだけど。」
「そんなに強くなったのか・・・?」
「聖女の力も潜在的にあったのではってクレドから言われた。
だから私は1年前には先代の“チチ”よりも強くなってた。」
「それは・・・物凄く強いな・・・。」
「うん。」
私の返事にステル殿下は感心したように頷くだけで、それ以上は何も言ってこなかった。
“ルル”のことは忘れてしまったらしい。
ステル殿下は10歳までしかインソルドにいなかった。
インソルドでは組織を作る教育、組織を指揮する教育、国王に必要な教育、そして魔獣と戦う教育はされてきた。
それらを持って王宮へと10歳の時に戻ったソソ。
黒髪持ちの幼いソソがこの腐り果てた場所で生き抜くことは凄く凄く大変だったはず。
魔獣とも違う別の悪いモノばかりのこの場所で。
「“ステル皇太子殿下”、王座の間にいらしてください。
1年前の魔獣の大群、そして今回の魔獣の大群を引き寄せたのは貴方のせいだとジルゴバート王弟殿下がお待ちです。」
モルダン騎士団長がステル殿下にそう言うと、ステル殿下は少しだけ吹き出した。
「貴方に“皇太子殿下”と初めて言われましたね。」
「俺はお前のことが大嫌いだからな。
でもいくらかお前を許せる気持ちにもなった。
俺が売った喧嘩を無視し続けてきたお前が初めて聖女様のことでムキになって。
戦や討伐以外で初めて血の通った男になった姿を見て、お前はお前で大変な人生だったということが俺の心にやっと落ちてきた。」
「その割にはクレハの討伐には近衛騎士団は動かなかったんですね。
ジルゴバート王弟殿下をお守りしていましたか?」
「王座の間には待機していたが、マドニス宰相が近衛騎士団を動かさなかった。」
ステル殿下からは騎士団を動かしているのはマドニス宰相だと聞いていた。
クラスト陛下の前の国王の時から宰相をしているというマドニス宰相。
ステル殿下も1年前に団長になってから顔を合わせるようになっただけで、そこまで関わりがないというマドニス宰相。
「マドニス宰相が“ここはステル皇太子殿下にお任せするように”と俺に指示を出してきた。
王都に兵だけを出し、“どんな厄災も祓える男になったと信じましょう”と王座の間の天井窓を強い目で見上げていたから俺も黙っていた。」
モルダン騎士団長が楽しそうに笑いながらそう言って、ステル殿下に向かって騎士のポーズをしてきた。
「お前が倒したのかその聖女様が倒したのかよく分からない戦いだったけどな!!!」
大きな声で笑うモルダン騎士団長に、ステル殿下は嬉しそうに笑いながら騎士のポーズをしていた。