婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

16 軍隊生活② 〜予期せぬ再会〜

「よう、親友! 奇遇だなぁ、こんなところで」


 聞き覚えのあるその声に背筋が凍った。

「………………」

 わたしは背後からの陽気な声音の問いかけの返事に窮して、振り返れずに硬直する。
 な、なんで、彼がいるの? よりによって、なぜここに?

「おい、だんまりかよ」

 これはもう逃げられないと、わたしは観念して振り返る。刹那、顔をしかめた。
 やっぱり。
 声の主は、案の定レイだったのだ。

 わたしは内心動揺して心臓がバクバクしているのを悟られないように、平静を装う。

「や、やぁ。久し振りだな。オマエももう鉱山を出たんだな」

「あぁ。今は広く浅く、様々な場所を転々としているんだよ」

「……オマエの父親の方針で? 今もお忍びで?」

「まぁ、そんなところかな」

「そうか。貴族は大変だな」
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