婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

「まぁ、まだ大丈夫だよ」レイはニコリと笑う。「教官も君の根性のあるところは認めていたからさ」

「本当に大丈夫なんだな!? 首にならないっ!?」

 必死のわたしはレイの胸ぐらを掴んで揺らす。
 彼は振動に身を任せながら笑って答えた。

「大丈夫だって。僕からもオディオはやれば出来る男だって口添えしておいたからさ。僕と二人で特訓をして彼らを見返してやろう」

「レイ……!」

 彼の優しさが胸にじんときて、思わずうるうると涙が滲む。
 駄目だわ……人前で感情を露わにするなんて令嬢として恥ずかしいことなのに。ローラント王国に来てから人の優しさに感動しっぱなしで涙腺が脆くなってしまったみたい。

「ありがとう。これからよろしく」と、わたしたちは拳を突き合わせた。


 それから、レイによる猛特訓が始まった。彼の指導はスカイヨン先生並みに厳しかったけど……っていうか、鬼教官より厳しいってどういうこと? ……諦めずに喰らい付いていったお陰で、辛うじて炊事場行きは免れたわ。

 これで一安心。
 
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